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闇の中で

  • 2013/10/28(月) 13:34:18

『おびただしい人の群れの中、阿鼻叫喚の声が崖の中でこだまする。



頭がおかしくなりそうなぐらいに、断末魔の叫びがそこらじゅうで飛び交う。


耳も…心もおかしくなりそうだ。恐怖という恐怖が体と心を支配する。




地獄の炎の揺らめきの中、三メートル、いや五メートルはあろうかという鬼たちが棍棒を振り回し、人間を奥へ奥へといざなう。


その声は地響きそのもので、鬼たちが一声あげるたびに、『ひきつけ』を起こす者も何人もいた。






動いていなければ、地面の岩に足の裏の皮が引っ付いてしまい、立ち止まることは炎に焼かれてしまうことを意味する。




舌を抜かれていて、喋ることも出来ない。



ただただ暑い…。




まるで身体中の血液が沸騰しているようだ。






汗も枯れ果て、水が飲みたくて飲みたくてたまらない。





火であぶった細くて鋭い鉄の棒を持ち、目に突き刺してくる黄色い鬼。
だらしなく開いた口に、焦点のあわない目。

煮えたぎる油の大釜の中へ突き落とす青鬼。




蜘蛛の糸に絡められ、動けないところを下から火炙りしている赤鬼。





何度殺されたらいいのだろう。



幾度と殺されても、どう言うわけか、鬼の手の平の上で、再び息を吹き返してしまうのだ。




あとどのぐらいここで苦しまなければならないのだろう。




あつい…




苦しい…




あつい…









僕は…地獄にいた。



地獄というものや鬼というものは、本当の本当にあったのだ。
  


おとぎ話の類のものと思っていた。


しかし…







しかしそれなら何故…






…どうして僕は、地獄行きなのですか…??





何故僕が地獄に…??





悪いことなんて何一つしていない…。




屋上から飛び降りたのだってそうだ。

あいつらが僕をいじめなければ僕だって自殺しようなんて思わない。





あんなにいじめられたのに…。



悪いこと何にもしていないのに…。





それでも僕は地獄行き…。





娑婆でもいじめられて…、





死んでも地獄で…





どうして…。どうして…。』






屋上から飛び降り、尋常じゃない痛みが頭部に一瞬訪れた後、僕は意識を失った。





そして目を覚ますと、僕は一人暗闇の中にいた。


目を開けても、目を閉じても闇の濃さは変わらなくて、ひたすら真っ暗。





音もまるで無くて、無音の時に聞こえる『キーン』という音が耳の中で痛いぐらいに響いてる。


『おーい』と言ってみても、反響はせず、口から出た音は、闇の彼方へ吸い込まれていってしまう。




自分が『屋上から飛び降りた』、『自殺しようとした』ということを思い出すのには、少しばかりの時間が必要だった。





わけがわからなくて、僕は混乱し、少し錯乱状態にあった。





『ああ、そうか…。俺…』



そして思い出した途端に、暗闇の中からどこからともなく声が響いてきて、僕は一瞬ビクッとなった。




『うわ~…。まじかよ。まじで死んだのあいつ。引くわー。』


『自殺したんだって~』




『家でやりゃいいのによ。まじ迷惑。』





『うわ!帯広じゃん!もう絶対あそこ近づきたくないわ』


無数の声が耳に飛び込んでくる。



まるですぐそばで喋られてるみたいだ。


その時一際大きくて聞き慣れたこえが、耳に刺さってきた。


『…馬鹿やろう!!』




聞き覚えのある声だ…。


『俺ぶん殴ってやるからな!』


『お父さん!止めてください!お父さん!』


『やめなってお父さん!!きっとがっつもつらかったんだって!』



『親より先に死ぬバカがど……るってよ!!あいつの…出せ!粉々にするから!いいから…ってよ!!』




間違いなくこの声はお父さんとお母さんそしておねーちゃんだった。



これは夢か??


それとも死んだのか??



僕は死んだのか…??









暗闇のなかで、誰かのすすり泣く声や、笑い声など、声だけが響いた。お父さんやお母さんの声はもう聞こえない。




そしてそれもやがて、少しずつ小さく聞こえなくなっていった。



というより、通り過ぎていくような感じに近い。音のあるポイントから右へ右へと少しずつ離れて行っている感じ。




完全に何の音も聞こえなくなってきたとき、正面のほうの奥に、小さくて赤い光があった。
いつからあったんだろう。その一点をしばらく見続けると、その赤い光は徐々に大きくなり、恐らく僕の方に近づいてきている。



その赤い光はなんなのか。





だんだん大きくなる。





…。









それは、ゴウゴウと燃え盛る炎そのものだった。



炎を担いだ牛車がこちらに近づいてくる。






(がっつ)

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