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其れ

  • 2013/11/11(月) 13:06:09

僕はただただ『それ』を見上げていた。




どうやってあの小さな車輪付きの小屋に入っていたのかはわからないけど、この場所は常識を逸してるのは直感でなんとなくわかってきていた。この生き物は、入っていた。それが事実で、今まさにそれが目の前にいる、このことが逃れられない現実そのもの。


小さな車輪付きの小屋は、いまだにグニャグニャと動いていた。


目の前には身体はゆうに四メートルはあろうかという巨大な生き物。


燃え盛る炎。


見渡せば漆黒の闇



僕は目の前に立ちはだかる、巨大な生き物をただただ見上げていた。




何をしても無駄、と全身で、考えるまもなく、そう僕は悟っていた。


でも決して全てを受け入れて平常心になったのではなく、


怖くて怖くて何にも出来ない。



動けない。金縛りみたいに。



そんな感じだった。


しかし、僕は恐怖を一旦通り過ぎたのか、身体はいつの間にか震えがとまり、頭の中はなんともいえない、少し冷静な状態になっていた。

怖いのには違いないけど、パニックになっていないという不思議な事実。



色々見渡せているという、この事実。



僕はおかしくなったんだろうか、と思っていた。



赤暗色の色をした肌は炎のせいだろうか、赤っぽくみえた。


三本の足の指に、隆々とした足の筋肉。一本一本の足が、まるで大木のようだ。腰には無地のクリーム色をした布きれを巻き、山のように六つに割れた腹筋。腕もまた、大木のようだ。上腕筋肉と思われる部分が、異常なぐらい膨れ上がっている。



パンチされたら骨は粉々だろうな…、と僕は思った。



手と思われる指もまた、三本であり、しかしその一本一本が電柱のように太い。
基本ベースとなるものは人間であることは間違いないが、筋肉がありすぎて身体のバランスが異常に悪いように見える。



動きはなんだか遅そうに感じた。


人間の骨格に近いからだろうか、『ありえないものを見た』という感じがあまりしない。




その時、背中を覆い隠すように頭部から伸びに伸びた毛並みが、どこからともなく吹いた風によってなびかれて、その巨体の生き物の顔がさらされた。






『…っ!!』



思わず僕は声を上げた。





目玉が…!!



一つ…!!



しかも…!!








顔の半分はあろうかという巨大な一つ目玉が、


その目玉が、


視線をそらさず、



ただただ




僕を






じ~…っと







見ていた。





長い髪の毛でわからなかったが、この生き物は、僕をずっとみていたに違いない。







心臓がバクバクなった。




『この生き物の射程圏内にある』とわかった途端、なんだか得体のしれない恐怖が再びやってきた。



殺される!!!




確実に殺される!!!







息を吸うという行為を忘れ、僕は頭から足の先まで血の気が引いていくのを感じた。


目の前の生き物がなんなのかを考えるなんていう余裕すらなく、思ったのはただ一点。


ぜったいに殺される』







言葉なんか通じるわけがない。何か喋ったりと反応したわけでもない。
でも、その雰囲気、匂い、とにかくその生き物に取り巻く空気が『危険』と、全身で反応していた。







今でもその視線は他へ移ることはない。



心臓がまたバクバクなった。





どうやって襲うのか考えているのか…。でも、例え自分がどんな行動をとったとしても、心の奥底まで見透かされていそうでならない。そのぐらい全てを見られている感じがする。



顔の半分はあろうかという一つ目の下には、鼻のようなものはなく、顔と認識できるその部分には、一つの大きな大きな、盛り上がった目玉しかなかった。





まるでこの世のものとは思えない出で立ちだ、と、さっきまで、人間の骨格に近いから…なんて思っていたが、今では全然違うものに見えてきている。



この世のものとは思えない。



巨大な生き物はまるで先ほどとかわりなく、微動だにせず、僕をじ~…っと、見つめていた。





長すぎる髪の毛がゆらゆらと揺らめき、大きな大きな目玉を隠したりしながらするものだから、本当に不気味だ。




絶対に殺される。





絶対ヤバい。


何かしなきゃ…






殺される…





逃げれないか…








絶対殺される…





走るか…?




どこに…??








その時、すぐ近くの所で、大きな音で『バチッ!』と炎が弾き、僕は我に返った。



『あっつっ!!…ぶねっ!!』




弾け飛んだ火の粉が僕の肩に一つ、ついた。



『あっつ!!ぁあっつ!!……っ!!!』



こんなに火の近くにいたのに、恐怖のあまり、まるで熱さを感じていなかった自分の『熱に対する記憶』を思い出させるには、十分すぎるぐらい火は熱く、火の粉を、半ばパニック状態で慌てて払いのけていると、僕はこの巨体で不気味な生き物から目を反らしたことに、しばらくしてから気がつき、すぐさまに、とっさに視線を戻した。




『…っ!!!!』





目玉の下にはさっきまで何も無かったはずだ。


その目の下には口らしいものが出来ていて、その急に現れた口らしきものは、三日月のように端と端が上に上に上がって
……、



まるでニタ~…と笑っているかのように、いや、その生き物は、僕を見て確実に笑っている…。




さらには、今もなお断続的に聞こえる『ゴー…』という地鳴りによく似た音が、この不可解な一連の出来事で、よりいっそう恐ろしく、不気味な雰囲気を演出していた。











その時だった。



それまで断続的に聞こえてきていた、地響きのような『ゴー…』という重低音が突然消えた


息を吸う音が響き渡っていくかのような無音の中、



その不気味で巨大な生き物の口元から、




呟くように、


か細くて弱々しい、





人間でいうところの、




裏声をつかったような違和感のある声が、







聞こえてきた。






『エマオ…カノイツア…』






『カノルジンカクツア…』





『ナダンルエミニニオハレオアャジ…ケケケ』





『キイクゴジ…キイクゴジ…キイクゴジ…』





その巨大な身体からして想像がつかない声色と声の小ささに、身の毛がよだつのを頭部あたりで主に感じていた。


何語かもわからない、暗号のような、意味がわからない言葉に、一体何をされるんだろうという、先の見えない恐怖が増していく。

恐らく、『何か』をすることが決まったのだと思う。







一瞬だった。





僕の目をそらすことなく、裏声のようなか細い声で、暗号のような言葉を発したその不気味で巨大な生き物は、


笑い、






僕を尋常じゃないスピードで、





至極簡単にひょいと捕まえ、




まるでゴミをすてるかのように、



勢いよく、




黒牛が引く、燃え盛る炎の、





車輪付きの小屋へと、





僕を





強引に投げ入れた。







ズダーーーン!!!



大きな音が闇の中に響いた。







もうろうとする意識の中、僕は、『そういえばなんでこいつはここにきたんだろう…』と、思っていた。




口から温かくて、ドロッとしたものが流れ、僕は気を失った。







(がっつ)

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